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読書三昧の日々

葉真中顕「ロスト・ケア」

2023/08/31
は行の作家 2
#読書#本#本レビュー#葉真中顕#ロストケア#光文


光文社
2013年2月 初版1刷発行
304頁

のべ43人もの介護を受ける高齢者を殺害し、そのうち十分に裏が取れた32件の殺人と1件の傷害致死の容疑で起訴された〈彼〉
戦後犯罪史に残る凶悪犯に下された判決は死刑でした

殺すことで被害者と被害者の家族を救いました
僕がやっていたことは介護です
喪失の介護「ロスト・ケア」です
検察官・大友の取り調べに対し、そう嘯く〈彼〉
自らの行為は正しいと言い切ります

検察官・大友は、死刑判決が確定した後、ようやく〈彼〉の本当の目的に気づきます
〈彼〉が死んだとしても〈彼〉の物語は残ります
それを目の当たりにして、目を覚ました人々が少しでも良い方向にこの社会を、この世界を変える、それが〈彼〉の目的だったのです

ミステリーとしても楽しめますが、介護をめぐる社会状況を世に知らしめるものとしての価値が高い作品と思いました
また、殺人犯を焙り出す過程で『統計』が使われたのが新鮮でした


介護を描いた映画、ドラマ、小説は多いです
しかし「現実はこんなものじゃない」という声をよく聞きます
両親ともに早くに亡くなっており介護の経験がない自分
本書に描かれる介護の凄まじい現場に息が詰まりそうになりました
数年後か十数年後か、主人の介護が始まるのかもしれません
自らが介護される側にいるかもしれません
正直、現実はさらに過酷と言われても想像も出来ません
その頃には介護現場の状況が今より良くなっている、とは全く思えません…

葉真中さん初読
松山ケンイチさん主演の映画を知り読んでみました
どんな風に映像化されているのか興味津々です

202308330ロストケア

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Comments 2

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こに

こに

latifaさん

松山ケンイチさん、シリアスからコミカルまで、楽しませてくれますね。
介護の問題はこれから益々厳しく難しくなるでしょうね。
自分が、まさにその世代と思うとゾッとします。


母親は私が22歳の時、46歳で亡くなりました。
亡くなる前は入退院を繰り返していましたが祖母が元気だったので病院の付き添いはお任せ、私は最後の1か月以外は普通に会社勤めをしていました。病気で弱っていく姿を見続けていると何となく覚悟が出来てくるもので、喪失感はありましたけれど割に立ち直りは早かったかと思います。どちらかというと父親っ子だったし。
以前、中井貴一さんが父親の佐田啓二さんより長生きできないと思っていた、と仰っていましたが、私も全く同じ。何事もなく47歳を迎えたときは変な心持ちがしましたよ。それから早20年近くも過ぎたなんて信じられません。
でもね、今も生きていたらどんなお婆さんになっているのだろう、とよく思います。

>高齢になって体がしんどいままの状態で長生きして辛いと言ってる親を見るのも辛い・・・。
父親も70歳で亡くなったので、そういう経験は出来ずしまい。ある意味幸せなのかも、とも思ったりします。

2023/09/02 (Sat) 16:09

latifa

こにさん、読まれたのですね。
>殺人犯を焙り出す過程で『統計』が使われたのが新鮮でした

そうそう。そうでしたよね。

読み応えのある内容でしたよね・・・
どうしてもマツケンが頭によぎります。

ところで、以前お話した時にお聞きしたのですが、こにさんはお母様、早くに亡くされたのですよね・・・。その時はきっとショックが大きかったのではないでしょうか・・・。

早くに亡くすのも悲しいし、高齢になって体がしんどいままの状態で長生きして辛いと言ってる親を見るのも辛い・・・。

2023/09/01 (Fri) 14:21