大島真寿美「渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」
文春文庫
2021年8月 第1刷
解説・六代 豊竹呂太夫
399頁
2019年、第161回直木賞 2020年、第7回高校生直木賞受賞作
江戸時代
享保10年(1725年)、大坂の道頓堀に生まれた穂積成章
幼いころから所謂浄瑠璃狂いの父に連れられ竹本座へ通う毎日
母に疎まれ家を出る時に父から近松門左衛門の硯をもらい、繰浄瑠璃作者・近松半二として歩き出します
なかなか芽が出ませんが、何度書き直しをさせられても書かずにはいられない半二でした
人形遣い、太夫、歌舞伎役者、芝居小屋の内から外から、道行く人の頭の中までも渾然となって混じりあって溶けあって、ぐちゃぐちゃになった渦の中から出てきたのが自分たちだ
筆を握ったまま死んでいった大勢の者たちの念をすべて背負って書いているのではないか
浄瑠璃が好きで好きでたまらない半二の熱がじんじん伝わってきます
人気作品を何作か遺しますが歌舞伎人気に押されがちな操浄瑠璃を憂えながら天明3年(1783年)に亡くなります
半二が書いた名作「妹背山婦女庭訓」の登場人物お三輪のモノローグが出てきます
それも半二の時代だけではなく現代のお三輪も、です
“人形”お三輪が、今は詞章は舞台の端に映し出されるのだ、客は人形を見て、太夫を聞いて、文字を読むと忙しいことだ、しかし世の中が変わっても不思議なことに妹背山婦女庭訓の性根はちゃんと伝わっていてずっと人気演目のままなのだ、と語ります
解説の冒頭
のっけから仰天したんは、大島真寿美さんは名古屋の人やのに、なんでこんなディープな大阪弁を全編にわたって書き通せたんやろか、ということでした。
そうなんです!
私も驚きました
豊竹呂太夫さんが誉めていらっしゃいますので全編『正しい』大阪弁なのですよね
また、帯の言葉「江戸時代の実在の登場人物が目の前で泣くわ笑うわ喋るわ喋るわ、喜怒哀楽をまき散らすんです。そんなワンダーランドを味わうことができる私たちはホンマ幸せもんでんなあ。」に全く肯き君状態でした(笑)
浄瑠璃研究においては近松門左衛門に偏っているとのことですが、少ない資料でよくここまでの物語を作り上げられたものです
直木賞にふさわしい力作です
続編「結」も読みたい!
そして、国立文楽劇場に行きたい!!

年明けにウォーキングを兼ねて出かけた七五書店は地元の作家さん応援で入口正面に大島真寿美さんコーナーが設けられています
「結」のサイン本が置いてありました
迷いに迷いましたが文庫本が出るまで我慢我慢と自分を抑えました
エライ!(;・∀・)

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