荻原浩「金魚姫」
角川文庫
2018年6月 初版発行
解説・豊崎由美
454頁
ノルマばかりを要求されるブラック企業で仏壇販売の営業マンとして働く潤
毎日上司のパワハラ暴言に耐えて何とかやっていましたが、結婚を考えていた恋人に振られ、薬とアルコールが無ければ眠れなくなってしまいます
夏のある日、近所の神社から聞こえてくる祭囃子に誘われて出かけてみる気になった潤は金魚すくいに目を留めます
「すくえなかったら、あのビルの屋上から飛び降りて死のう」と心に決めた潤
美しい琉金をすくいます
何故か、それは、まるで向うから飛び込んできたかのようでした
取敢えず飛び降り自殺を止めた彼は、金魚を飼う為の水槽や道具、書籍を買い求め帰宅します
その夜、眠っていた潤の前に現れたのは赤い衣をまとった謎の美女
最初の言葉は『どこだ』
とうとう幻覚を見るようになってしまったと嘆くのでした
数日が過ぎ、美女が琉金の化身らしく記憶を失っていると悟った潤に変化が現れます
なんと、亡くなってまだ間もなく現世に思いを残している人が見えるようになるのです
純粋に、亡くなった人の思いを伝えたいという思いから遺族の家を訪ねる潤に、どんどん仏壇の注文が入るようになり営業成績はアップ
琉金との暮らしにも慣れてきて、リュウと名付け、一緒に出掛けたりしているうちに、少しずつですが病んでいた心が回復、寿命が尽きるまではしっかり生きよう、その為に変わろう、とまで考えるようになります
何故美女が琉金に姿を変えなければいけなかったのかは読者には早々に明かされます
それを知らないのは潤とリュウの二人だけ
現在の潤の生活と、リュウの過去の物語が交互に語られ
荻原流ユーモアも散りばめられておりハッピーーエンドかと思いきや…
琉金が何故潤の元にやってきたのか解るのは最後の最後
予想外の結末に愕然としてしまいました
何も…そんな…切なすぎます
最後の5行が染入りました
金魚の化身といえば思い出すのは二階堂ふみさん、大杉蓮さんの『蜜のあわれ』
あの赤い衣装を想像しながら読みました
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