福永武彦「草の花」
福永武彦さんの作品の中で一番好き
美しい文章、選び抜かれた言葉の数々に、惹きつけられます
戦後まもなくのサナトリウム
結核の療養にきていた私は汐見という青年と出会う
彼は2冊のノートを私に残して自殺行為とも思える手術を受け帰らぬ人となる
汐見の残した2冊のノートには彼が18歳の時、24歳の時に求めた二つの愛について書かれていた
研ぎ澄まされた理知ゆえに後輩の藤木忍との純粋な愛に破れ、藤木の妹との恋にも挫折した汐見
まだ熟れきらぬ孤独な青年の愛と死が描かれています
汐見の孤独は理知からきている
理知が彼を潔癖にし、潔癖が妥協を許さない
そのために彼は友を失い恋人を失ってしまう
愛する事の困難さ、他人と理解し合う事の難しさ
人生に於いて最大のテーマが描かれています
キリスト教の神との対比などもあり多少難解に感じる点があるかもしれませんが
人生において困難にぶつかった時に、ある方向を指し示してくれる作品だと思います
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