初野晴「水の時計」
角川文庫
2005年8月 初版発行
2009年5月 7版発行
解説・吉野仁
378頁
2002年、第22回横溝正史ミステリ大賞受賞作
「病」と「幸せ」とのドラマチックな関係を物語った奇想ミステリ
医学的に脳死と診断されながら、月明かりの夜に限り、特殊な装置を使って言葉を話すことのできる少女・葉月
生きることも死ぬこともできない、残酷すぎる運命に囚われた彼女が望んだのは、自らの臓器を移植を必要としている人に分け与えることだった
葉月の望みを叶えるために『組織』に必要とされたのが、不良高校生の高村昴
テーマが脳死や臓器移植という重いものであることと、両親の死や兄の入院など、不運の連続に見舞われ転落を余儀なくされた昴の物語は辛いもので、読んでいてこちらも気持ちが暗くなりそうでした
葉月が昴を『組織』に呼び込んだ理由は最後の章で語られますが、これがまた切ないです
「幸福の王子」をモチーフにした物語は悲しくも少しだけ救いのみられる終りを迎えます
初野さん、Amazonや読書メーターをみると評価が高いようです
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