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読書三昧の日々

シャミッソー「影をなくした男」

2015/12/26
海外の作家 0

訳・池内紀

岩波文庫

19853月 第1刷発行

201412月 第44刷発行

135

 
 

「影をゆずってはいただけませんか?」

謎の灰色服の男に乞われるままに、シュレミールは引き替えの“幸運の金袋”を受け取る

大金持ちにはなったものの、影がないばかりに世間の冷たい仕打ちに苦しまねばならない青年の運命を描く

 

この不思議な寓話は、目の前の餌につられて軽はずみな取引をしてしまった青年の辛い状況、後悔と苦悩を繰り返し描くことで、人は生きるうえで安易に楽な方向に進んではならないという教訓も兼ねているのでしょうか

 

影がない、ということは影を作る本体がないということです

影があって当たり前の人生を送る人々からみれば、影のない人間は存在しないも同様

世間から否定されるのも道理です

終盤、1歩で7里を行くという古靴を手に入れてからのシュレミールにはやや救われますが、想像するに恐ろしいことですね

 

皆川博子さんも「影を買う店」という短編集を出しておられます

『影』には人を惹きつける何かがあるようです

 

最後におかれている、シャミッソーよりヒッツィヒ宛とフケーよりヒッツィヒ宛、ヒッツィヒよりフケー宛の3通の手紙とシャミッソーによる「わが友ペーター・シュレミールに」が物語の解説の役目を担っています

 

物語の背景や言わんとすることなどをあれこれ考えず、素直にメルヘンとして読んでも十分楽しめる作品かも

(^_^)v
 
 
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