縄田一男編「まんぷく長屋 食欲文学傑作選」
新潮文庫
2014年11月 発行
解説・縄田一男
258頁
命を紡ぐ一椀
異彩を放つ食文学、傑作7編を収録
池波正太郎「看板」
池波さん初読です
NHK・BS時代劇で『雲霧仁左衛門2』を観たので、すんなりこの世界に入れました
雲霧と同じように厳しい戒律を誇った盗賊集団、夜兎の角右衛門一味
かつて一味の者が犯した過ちが元で乞食に成り果てた女の心の拠所=看板を知った角右衛門の後悔先に立たず
筒井康隆「人喰人種」
筒井さんとは相性が良くありません
舞台は日本、関西方面
人喰人種の住むエリアに迷い込んで弁当として食われてしまいそうになる“わい”
最後には被害者から加害者の立場に転じてしまう“わい”
シニカルな笑いやブラックユーモア満載です
尾崎翠「アップルパイの午後」
戯曲です
機関銃のような会話のやり取りがテンポよく進み
兄と妹の友人、妹と兄の友人、二組の男女の恋は成就に向かいます
山田風太郎「慶長大食漢」
時は江戸・慶長年間
家康の最期を稀代のグルメ・三代目茶屋四郎次郎との人間関係の中にとらえています
伊藤礼「狸を食べすぎて身体じゅうくさくなった困ったはなし」
狩猟に行った面々、狸はビールに合うと食べ過ぎて狸のにおいが抜けずに困ったという、とぼけた話
海外文学のようだと思いましたら、翻訳家でもいらっしゃったのですね
火坂雅志「羊羹合戦」
火坂さんも初読
先日最終回をむかえたNHK・木曜時代劇『かぶき者 慶次』の原案が火坂さんですね
本作はまだ豊臣秀吉が権勢を誇っていた時代
越後・上杉景勝の勘気をこうむり追放となっていた男の元に関白秀吉が諸侯に振る舞った羊羹をしのぐ物を作れという命が下る
出来上がった羊羹は確かに素晴らしいものであったが家老・直江兼続はそれを認めようとはしなかった
羊羹をネタに繰り広げられる政治的駆引きの幕引きは流石です
日影丈吉「王とのつきあい」
異臭が漂ってきそうな話でした
借金返済の目途が立たず催促にやってきた友を殺してしまった男
彼は、友人の死体をどう処分したのでしょうか
食は食でも
生唾ゴックン、お腹が鳴りそうな話あり
悪い意味で食前食後には読まない方がよい話あり
当たりもあれば外れもありますが
気軽に様々な作家さんの作品に触れる事が出来るのがアンソロ―ジーの良さですね
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