藤沢周平「闇の穴」
新潮文庫
1985年9月 発行
2008年4月 43刷改版
2013年5月 53刷
解説・藤田昌司
283頁
武士の悲哀を描いた2編
「木綿触れ」
子を失って悲嘆にくれている妻を励まそうと苦しい生活の中、絹の着物を作らせたことが仇となり以前の上司とのことで妻は自殺を遂げる、という下級武士の無念と悲劇
「小川の辺」
脱藩して江戸へ逃亡した義弟と実妹を主命によって討手として斬らねばならなくなった武士の不条理
江戸の町を舞台に繰り広げられるミステリー3編
「闇の穴」
江戸の路地裏に住む職人の女房
前夫が突然訪ねてきたことから始まる落ち着かない日々
「閉ざされた口」
殺人現場を目撃したショックから言葉を話せなくなった子供を抱えて働く薄幸の寡婦
「狂気」
川べりの草むらで姦されたうえ殺害された幼女の骸が見つかる
幼女が握りしめていた根付けから犯人を追いつめていく町役人
東北の民話のような味わいの2編
「荒れ野」
京の寺から陸奥国へ行こうとしていた若い僧
あと少しというところで道を間違え、しばし世話になった荒れ野の中の一軒家の女主人の正体は?
「夜が軋む」
飯盛り女が客に問われるがままに語る身の上話
大雪の夜、地震でも強風でもないのに激しい家鳴りがした翌朝
家の外で雪に埋もれた男の死体が見つかる
読後すぐは、映画の印象でしょうか「小川の辺」ばかりが思い出されましたが、時間が経つにつれ、あれも良かったこれも良かった状態になりました
藤沢周平さんの原風景の中で創作された物語の数々
まだまだ未読本が多くあって嬉しいです
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