皆川博子「笑い姫」
文春文庫
2000年8月 第1刷
解説・岩井志麻子
354頁
天保年間、江戸両国
阿蘭陀通詞(通訳)であった父親譲りの才がありながら、気ままに戯作で生計をたてている蘭之助が居候をしている部屋に突然飛び込んできた軽業師・奇鈴丸と相方のすっぺら坊
冒頭、物語の導入部のなんと痛快なこと
蘭之助が書いた戯作『笑い姫』の下書きの一部を偶然読んだ軽業師一座の座頭・小ぎんが話の後先を知りたい、と言っているのだという
まさにその日、江戸に着いた赦免船で戻ってきた幼馴染の兄弟を出迎えに出かけたことから、権力者たちの争いに巻き込まれる蘭之助、小ぎん一座たち
舞台は、江戸~長崎~小笠原諸島と思わぬ展開を見せます
小ぎんの悲しい過去と戯作『笑い姫』の不思議な符合に始まり、いつのまにやら水野越前守、鳥居耀三らの政争に巻き込まれ、様々な登場人物と邂逅を繰り返す
運命に翻弄されているかのように見えて、それを受容れ自らの意志で突き進む蘭之助
どこまでいくのか、どうやって物語を収束させるのか、ハラハラドキドキの連続に頁を捲る指が止まりません
スケールの大きな物語でした
蘭之助たちの行く先々に現れる正体不明の乞食坊主
これが間宮林蔵と判明したときには驚かされました
人並み外れた体力・気力を持つ彼なら、この設定もありでしょう
加えて軽業師一座の面々、蘭之助の幼馴染ら脇役たちも主役に劣らぬ存在感を見せてくれます
いやぁ~、面白かった!
作中作『笑い姫』を映像か舞台かなにか、視覚で観たいなぁ~
- 関連記事
-
- 皆川博子「結ぶ」
- 皆川博子「笑い姫」
- 皆川博子「アルモニカ・ディアボリカ」