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読書三昧の日々

ブッツァーティ「タタール人の砂漠」

2014/08/29
海外の作家 0

訳・脇功

岩波文庫

20134月 第1刷発行

20141月 第3刷発行

340

 
 

士官学校を卒業して、将校に任官されたドローゴは最初の赴任地であるバスティアーニ砦へと旅立ち、険しい山道を進んで行く

ところが、彼は砦がどこにあるのか、そこへの行程もはっきりと知らされないでいる

造りも武器弾薬も時代遅れの砦に着任してすぐ、ここに来たのは間違いだと感じ離任を願い出るドローゴだったが、本気になれば出ていける、少し様子を見ても良いか、と思ったのが過ちの元

結局、辺境の砦で、孤独で単調な三十余年の日々を過ごすことになるのだ

司令官も、上官も、ほかの将兵たちも、いずれここで未知の何かが起こるのではないかという期待を心に秘めながらじっと待ち続けている

彼らの漠然とした期待から生み出されたのが、北の砂漠から伝説のタタール人の襲来という幻想と、北の王国の軍隊による攻撃だった

こうした幻想、期待を抱く一方で、結局は何も起こらないままに終わってしまうのではないかという不安、焦燥感に苛まれながら、霧に包まれた謎めいた北の砂漠のほうを窺い続けて砦から離れられない

 

砦は人々の人生を納めた入れ物

タタール人の襲来という幻想は、人々が人生で抱く期待や不安の象徴

長くむなしく過ぎた年月ののち、ようやく北の砂漠から敵の軍勢が攻め寄せてきたときには、もう年老い病に冒されたドローゴは三十余年もの間待ちに待った瞬間に立ち合うことも出来ず、砦を去って行かなければならないのだった

人は死によってのみ、不条理から解放されるのだった

 
 

現実をみれば

ずっと同じ仕事に従事し、単調な日々を過ごさざるを得ないのが大多数の人々の人生であり

人々はそうした日々に耐えるため、なにか価値のある出来事が起こるのではないかという幻想や期待を抱き続けるのですが、何事も起こらないまま時は容赦なく流れ去るのです

 

厳しい内容がグサリときます

気付かぬうちに通り過ぎてしまった、またはわかっていながら無視した大転換点

残り少ない人生、取り返しのつかないことをしてしまったことへの後悔とともに生きるしかありません

 

読むのが遅かったかもしれません

いえ、まだ間に合う、少しは取り戻せる年齢かもしれません

ともかく、読んでおいて良かったと思える作品であることは間違いありません




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