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読書三昧の日々

吉村昭「島抜け」

2014/08/02
吉村昭 0

新潮文庫

200210月 発行

20118月 5

解説・大河内昭爾

261

 

表題作「島抜け」

読んだ講釈が幕府の逆鱗に触れ、種子島に流された大坂の講釈師・瑞龍

島での余生に絶望した瑞龍は、流人仲間と脱島を決行する

丸木舟で大海を漂流すること15日、瑞龍ら4人が流れ着いた先は何と中国だった

破船した漂流民と身分を偽り、4人は長崎に送り返される

苦難の果て、島抜けは成功したかに思えたが…

 

著者は

江戸時代、漂流民が海外から帰国した場合の吟味書の中の『講釈師が3人の流人とともに脱島した』という10行ほどの記述に注目し、もとになる記録が実在すると直感して、長崎、鹿児島、種子島、山口と旅をして、ここぞと思うところを探し歩き全容をつかんだそうです

この史実への忠実さという細部へのこだわりと抑制された文章には毎度頭が下がる思いです

優れた講釈師が時代の流れに押しつぶされると言う理不尽に立ち向かう姿を淡々と、しかしたるむことなく描きます

 

「欠けた碗」

江戸時代、甲斐の国を襲った凶作に幼児を失ったあげく村を見捨てざるを得なかった男の、妻を失うまでの極限状態の悲劇

当時の農村のしきたりや事情がしっかりととらえられています

 

「梅の刺青」

江戸末期~明治初期、解剖には刑死の人間の身体がつかわれるのが通常だったが、士族が自ら死後「解体」の願書を提出したという前代未聞の出来事から筆をおこしています

今でいう「献体」ですね

旧習を脱し、多難な障害を経て成就された事実の上に現代医学は成り立っているのです

 
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