佐伯一麦「光の闇」
扶桑社
2013年4月 初版第1刷発行
211頁
聴覚、視覚、嗅覚、脚、声、記憶
身体の一部をうしなってからの人生の一幕を描いた連作短篇集
欠損を抱えた方々のどなたも、その状態が当たり前、普通に暮らしていらっしゃることに少々驚きました
それでは不便でしょう、と思うのはこちらの傲慢、思い上がりです
佐伯さんの、許容範囲の広い温かな視線に、自分の狭量を思い知らされました
話の途中で大震災が起こります
佐伯さんが訪問したお宅は津波で流され、話を聞かせてもらったご夫婦のその後の消息はわからないそうです
佐伯さんのように東北に暮らす作家さんたちが今後も書き綴っていって下さることが、大震災の記憶に繋がるのかもしれません
あとがきより
自分の身近に存在している、欠損感覚を抱えて生きている人たちへの聞き書きを進めているうちに、少しずつだが、その世界を察するようになり、それぞれの短編が相互に、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、記憶……が響き合って連関していることに気づかされることとなった
貴重な話をお聞かせ下さった方々に、心から感謝申し上げます
第1話「鏡の話」の朗読音声が聞けます
http://www.fusosha.co.jp/special/hikari/
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