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読書三昧の日々

藤沢周平「夜の橋」

2014/04/12
藤沢周平 0

文春文庫

一次文庫 1984.2月 中公文庫

20117月 第1

解説・宇江佐真理

336

 
 

武家もの、市井もの、人々の哀愁を描いた短編集

 
 

読みたかったのは「泣くな、けい」です

 

相良家に奉公する女中・けいが故あって閉門になった主・波十郎のかわりに遠い地まで旅をし、紛失した名刀を取り戻してくる、という話

まだ二十歳にもならない女性にとっては実に大変な旅で

戻ってきたときのけいは

髪は乱れ着物は汚れ、全身汗みずくになって土間に立っていた。

顔は真黒に日にやけ、眼ばかり光っている。

近づくと、けいの身体から異臭が匂った。

と、まぁ、まるで乞食のような姿でした

 

名刀を買い戻してきたけいに

「苦労したの、けい」

「はい、旦那さま」

けいは顔をあげて波十郎を見た。その眼にみるみる涙が溢れ、けいは不意に手で顔を覆うと、肩をふるわせて泣き出した。そして、けいはついに畳に身体を投げ出し、身を揉んで泣いた。けいはいまはじめて、三百里の道を旅して帰った心細さに気づいたふうにも見えた。

「泣かんでもいいぞ、けい。立派にしとげたではないか。泣くことはないぞ」

波十郎は、自分も目頭が熱くなるのを感じながらそう言い、縁側に立って行った。

と言いつつ、うしろでけいの泣き声がつづいているのを客観的にみている波十郎をゆとりの目をもって描いています

 
 

他には以下の作品が印象的でした

 

市井ものでは

表題作「夜の橋」

夫の博打好きが原因で一度は壊れてしまった夫婦の再生

 

「冬の足音」

以前、錺師の父の元で修行していた職人への思慕が捨てきれず婚期を逃しつつある女性の心の迷い

 

「裏切り」

出会い茶屋で殺されていた妻

妻の日常生活を全く知らなかった男の苦悩

 
 

武家ものでは

「梅薫る」

婚約を破棄され、父親の勧めで別の男性に嫁いだ娘

婚約破棄の真の理由を知らされてようやく気持ちの整理が着いた

 
 

藤沢周平さんのゆとりとユーモアが生んだ秀作短編集です

 
 
 
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