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読書三昧の日々

葉室麟「乾山晩秋」

2013/06/25
葉室麟 3

角川文庫

200812月 初版発行

201211月 6版発行

解説・縄田一男

332

 
 

戦国から江戸の絵師たちを綴った5

 

表題作「乾山晩秋」

尾形光琳の弟、尾形乾山

陶工の道に進んだ人だが、光琳亡き後は技量の限界に悩んでいた

光琳の過去を回想しながら赤穂浪士の吉良邸討入に兄も絡んでいたのではないか、というエピソードも盛り込まれなかなかに楽しめました

 

「永徳翔天」

豊臣秀吉の庇護のもと、天下人好みの画を描くのが狩野の宿命と考え数多くの画を描きその名を轟かす狩野永徳だったが長谷川等伯の出現により牙城を脅かされ始めていた

画を描いていれば良かった時代は過去のこと

一度頂点に立った者にとって、その立場を維持することはいかに大変なことか

彼にとっては織田信長の命で描いた安土城の画だけが唯一天に駆け上がる心地で絵筆をとったものだったのです

 
 

「等伯慕影」

狩野派の牙城に入り込もうとする長谷川等伯

永徳の没後、徐々に力を伸ばし豊臣秀吉の依頼で多くの障壁画を描くようになる

時の権力者との関係次第で絵師の立場は何とでもなります

いつの世も厳しいことですね

現在、永徳の画は焼失などで殆ど残されていないが、等伯のそれは多く残っており桃山時代の優れた画という評価を受けている、という件には感慨深いものがありました

 
 

「雪信花匂」

狩野永徳亡き後、江戸幕府の御用絵師として活躍した狩野探幽の姪の娘・清原雪信

彼女の絵師としての成長と受難、恋模様を描いています

ほんの少しですが井原西鶴も登場します

 
 

「一蝶幻景」

狩野永徳の息子・安信に弟子入りし修業したことのある多賀朝湖(後の英一蝶)

彼は今でいう素行不良で破門されているとのこと

俳諧師、芭蕉や其角も登場

将軍・綱吉の時代の大奥の権力争い、赤穂浪士も少し関わってきます

朝湖の隣に住まう男が前話「雪信花匂」にも登場する人間ですし、全話が連作となっているともいえるでしょうか

 
 
 

絵師たちだけを取り上げた時代物を読むのは初めてです

寺院や美術館などで観賞したあの絵画の裏側にこのような物語があったのでしょうか

全てが真実ではない葉室さんの作り上げた物語とわかってはいても夢中になってしまいました

 
 
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Comments 3

There are no comments yet.

こに

No title

チャコティさん
ナイス!ありがとうございました。

2013/06/27 (Thu) 15:11

こに

No title

阿部さんの直木賞受賞作ですね。
ずっしり読み応えありそうで、とりあえず保留デス。^^;

2013/06/27 (Thu) 15:11

supernova

No title

等伯といえば、阿部龍太郎さんの「等伯」が思い浮かびます。
まだ未読なので、まずはこちらの短編から入るのもいいかも。

2013/06/26 (Wed) 17:20