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読書三昧の日々

山本一力「いっぽん桜」

2013/04/07
山本一力 2

新潮文庫

200510月 発行

201011月 12

解説・川村湊

322

 
 

花の題の短編集

 

一番良かったと思うのは表題作

「いっぽん桜」

深川門前仲町の口入屋・井筒屋の頭取番頭の長兵衛は主人・重右衛門から、隠居し息子の仙太郎に代を譲るに伴い一緒に勇退してもらいたいと言われる

店の経営陣の若返りという方針に伴いクビにされたわけで、表向きは素直に受け入れたものの内心納得のいかない長兵衛

まだまだ自分には出来るはず、自分の力が必要なはず、という思いが捨てきれない長兵衛は再就職先でも井筒屋のやり方を押し付けて周囲を困らせる

井筒屋という看板を失った長兵衛の悶々とした思いは分かります

分かりますが、その頑固さがかえって自分や家族を苦しめていることには気づきにくいものなのでしょうね

やがて大店の奉公では気づかなかった正味の人の情けを知り、ふっきれる長兵衛

娘と一緒に花見をしたいと思って7年前に借家の庭に植えた桜は、新しい場所にしっかりと根を張っている

それにくらべて植え替えられる前の土を懐かしんで、今の土に馴染もうとしていない自分はなんと恥ずかしいことか

リストラや転職を経験された方なら十分過ぎるくらい理解できると思います

 
 

「萩ゆれて」

土佐藩勘定方祐筆、服部兵庫

怪我の湯治先で知り合った漁師の娘に恋をした彼は武士をやめ漁師になる決意を固める

 

「そこに、すいかずら」

大店の主が娘の為に拵えた絢爛豪華な雛人形

主人夫妻が火事で亡くなったことから人形を手放すことになった娘の小さな望みは叶うのだろうか

 

「芒種のあさがお」

朝顔作りの職人の家に嫁いだ女性の奮闘と彼女に寄せた舅の情

 
 
 

夫婦が互いを、父が娘を、舅が嫁を思い遣る、日本人の今も昔も変わらない「人情」を描いています

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Comments 2

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こに

No title

supernovaさん
現代では失われつつある人間関係が描かれていて、懐かしいような気持ちになりました。
武士から漁師にはなれるけれど逆は無いよなぁ~、なんて捻くれた読み方をしてしまいました。
好きな女性の為ならば、ってネ♪

2013/04/10 (Wed) 19:39

supernova

No title

「人情」を描いた作品ですか。
ゆっくり本の中の世界に浸って読みたいですね。
私は「萩ゆれて」という作品が気になります。
武士という階級を捨てて漁師になる。かなりの覚悟が必要でしょうね。

2013/04/09 (Tue) 15:54