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読書三昧の日々

吉村昭「漂流」

2013/02/07
吉村昭 4

新潮文庫

198011月 発行

200812月 45刷改版

20116月 50

解説・高井有一

509

 
 

江戸・天明年間

シケに遭い黒潮に流された土佐の男たちは絶海の火山島に漂着した

無人の島で次々と倒れていく仲間たち

ただひとり生き残った長平は苦難の末12年ぶりに故郷の土を踏む

 

高知県にお墓も残っている実在した人物を主人公に描いたドキュメンタリー小説です

三浦綾子さんの「海嶺」とはまた一味違う、読み応えのある長編でした

 
 
 

「序」には、著者が江戸時代の漂流者の記録にどうして興味を持つのか、について書かれています

そこには第二次大戦後、何年も経ってから帰国する元日本兵についての記述もあります

自分はグアム島の横井庄一さんとルバング島の小野田さんしか知りませんでしたが、かなり多くの日本兵が戦争が終わったことを知らずに長い時間帰国しなかったということです

昨年の大震災以来、横井庄一さんが書き著したサバイバル術の本が売れているらしいです

本書「漂流」に描かれる長平のサバイバル術は時代の違いもあり、横井さんとは比較にならないほど凄まじいものですが、『絶対生き残る』という強い意志は共通しています

今の自分に同じことが出来るとは到底考えられませんが、突然極限状態に放り込まれたとしても『あきらめない、生きる』

そういう思いは持ち続けなければ、と思いました

 

故郷に戻った長平を待っていたのは決して平穏な暮らしではなかったようです

 

江戸期に残された漂流者の記録だけを元に、ここまでの物語を紡ぎあげた著者の力量に感服します

 
 
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Comments 4

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こに

No title

リトルムーンさん
嵐に翻弄されている最中や無人島に漂着した後など、伊勢神宮の方向にひたすら手を合わせて祈る、という描写が何度もありました。
極限状態に追い込まれた時、人は何かに縋るものなのでしょうね。
本人の強い意志と共に「神」の存在も大きかったようです。

故郷に戻ってみれば、出発する前に思いを寄せていた女性は他の男性と結婚していたり、生きて戻れなかった男たちの遺族からは非難の目を向けられたり、人の世はそういうものか、と理不尽に耐えながらの暮らしだったようです。
生きても辛いというのは哀しいですね。

2013/02/09 (Sat) 12:35

リトルムーン

No title

読み応えありそうですねぇー。
人って独りでも生きられる知恵があるってことですね。
現実にそういう試練を受けるって相当な精神力の持ち主なんでしょうね。

せっかく帰ってもしあわせとは程遠かったのでしょうか?
無人島にいたほうがよかったなんて事を思ったりしたのかなぁ?

2013/02/09 (Sat) 08:52

こに

No title

supernovaさん
当時、江戸幕府は鎖国政策をとっており沿岸を渡航出来る程度しか造船を許していなかったので外洋に出ればひとたまりもなく難破事故、漂流事故が多発していたみたいですね。
無名の人を入れれば一体何人の人が漂流者だったのか。
船乗りを職業とするなら元々ヤワな人ではないでしょうが、たった一人となればまた違いますよね。
私も皆と一緒がイイです(^_^;)

2013/02/08 (Fri) 17:39

supernova

No title

土佐で漂流とくれば、ジョン万次郎かと思ったら違いました;
1人生き残り、諦めず生き続ける。
相当な精神の強さが必要でしょうね。
私だったら、みんなと一緒に逝きたいと思うだろうなぁ。

2013/02/08 (Fri) 17:05