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読書三昧の日々

吉村昭「羆嵐」

2012/10/05
吉村昭 6

新潮文庫

198211月 発行

201111月 44

解説・倉本聡

219

 
 

熊を扱う小説といえば思い出すのは熊谷達也さんのマタギシリーズです

熊谷さんの描く熊は眼前に熊がいるかのような迫力があります

本作の羆は、ラスト近くで猟師に撃たれる場面以外は、読者の眼前にはほとんど姿を現しませんが、山を駆け上るときに起こる風、人家に入り込み襲った人間を食べている「音」、眼前には見えない羆に対する村人の恐怖心など吉村さんの抑えた筆致だからこそ伝わってくる生々しさに自分が現場にいるようで恐ろしさに寒気を感じるほどでした

 

大正4年12月、北海道の天塩山麓の開拓村で実際に起こった、わずか2日間に6人の男女を殺害という日本獣害史上最大の惨事を題材にしたドキュメンタリー長編

 

厳しいながらも軌道に乗り始めた開拓村の暮らし

11月下旬のある日、秋に収穫し軒下に吊るされていたトウキビが夜中のうちに食い散らされていた

家人は羆の所業にちがいないとは思ったのだが、トウキビを食い散らかしただけで山に戻った羆に身の危険を感じることはなかった

念のため、猟銃を持った老人に現場を見てもらい、羆が再び現れたら射殺してもらうつもりだったが数日たっても羆は現れず老人は立ち去る

しかし、その直後悲劇が起こった

一家の主人の不在時、羆に襲われた身重の妻と幼い息子

一度、人間の味をしめた羆は再び人を襲うという

それも、最初に襲った女性を狙うらしい

 

老練な猟師に撃ち殺された羆の肉を村人たちは鍋にして食べます

アイヌの宗教的な儀式の一つですが、人を襲った羆の肉を食べることが仏の供養にもなる、という考えのようです

 

羆の胃の中には消化されていない人の髪や衣服の切れ端があった、とあります

徹底的に羆を描き切ったと同時に、当時の開拓民の暮らしと大自然との共存の難しさを描いた作品でした

いや全く、そこいらの安直なホラー小説より『恐怖』がいっぱいでした

 
 
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Comments 6

There are no comments yet.

こに

No title

Tomatoさん
吉村さんのノンフィクションばりの小説は説得力がありますねぇ。
日本のどこかで、熊は毎日のように人の前に姿を現しているんですよね。
目の前に熊がいたら卒倒しそうです。('_')

2012/10/07 (Sun) 11:22

こに

No title

goofyさん
独りで読むなら日のあるうちをお薦めしますよ。^^
夜に読んでいて窓の外で得体の知れない音がしたりしたら!
もうダメです!!!

2012/10/07 (Sun) 11:19

こに

No title

あられもちさん
タイトルはこれで「けあらし」と読むみたいです。
オカルトや不思議体験なんかじゃなくて、現実の話ですから背中がザワザワして本当に怖かったです。

2012/10/07 (Sun) 11:17

Tomato

No title

これ、かなり以前に読みました。
臨場感があって怖かったですね。
私は北海道に住んでいますが、この秋も里に下りてきたヒグマのニュースが後を絶ちません。

2012/10/06 (Sat) 20:17

goo*y

No title

こんばんは。

怖そうだけど興味あります。
要チェック本に加えます。
でも怖そう。一人の時に読めるかな…

2012/10/06 (Sat) 17:32

あられもち

No title

羆・・・という漢字、何と読むんだろうと思えば「ひぐま」で変換できました。これは知りませんでした。
それにしても、怖い話ですねー、ゾゾー

2012/10/05 (Fri) 21:20