長野まゆみ「左近の桜」
角川文庫
2011年7月 初版発行
解説・瀧晴巳
264頁
武蔵野にひっそりとたたずむ一軒の古屋敷
そこは、世間をはばかる逢瀬のための隠れ宿「左近」
16歳になる長男・桜蔵(さくら)は、最近奇妙な男にかかわることが多い
生まれながらの性質なのか、その気もないのに、この世ならざるあやかしたちを引き寄せてしまう
桜の季節に始まり桜の季節に終わる12の短編集
美しい日本語で語られる美しい物語に季節ごとの花が彩りを添えます
桜蔵と弟・千菊(ちあき)の父・柾は正妻がありながら「左近」の女将との間に二人の男子をもうけたうえに男同士の色恋にも熟知している
正妻も承知のうえで二人を認知しており、柾、正妻、女将の三角関係は今のところ安定した状態
柾が素敵な大人の男なのです
桜蔵にその道の手ほどきをする指南役として、実にうまく立ち回ります
柾の妻も、真に大人の女です
枯れていない熟男熟女
少年から青年になろうとする桜蔵の妖しさも魅力ですが大人の男女のエロティズムや強かさも魅力的でした
夢か現か
人か幻か
生か死か
とても魅惑的な小説でした
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