fc2ブログ
読書三昧の日々

吉村昭「魚影の群れ」

2012/06/27
吉村昭 4

ちくま文庫
2011年9月 第1刷発行
解説・栗原正哉
329頁
 
 
吉村さん
読めば読むほど好きになります
ノンフィクションを思わせる冷静な筆致でありながら、登場人物が生き生きと浮かび上がってくるのが不思議
 
動物を仲立ちとして自然と対峙する人びとの姿を描いています
虫を見ただけで「ギャーッ!」となる方は読まないほうがよいかと…
 
「海の鼠」
戦後まもなく、瀬戸内の小さな島で実際に起こった鼠の大量発生がテーマ
段々畑の作物も、漁師が水揚げした魚も鼠に食べられてしまう
夜になると、道行く人の足下を鼠が横切る、天井裏を鼠が走り回る、赤ん坊が耳を齧られる
島に暮らす人々と鼠との闘いと、お役所仕事のお粗末さ
現代も同じ
放射能との闘いと、遅々として進まない国の対策
 
 
「蝸牛」
新種の食用蝸牛を飼育している農家があるらしい
かなりの高値で取引されている模様
調査に向った主人公が、その生態と、食用にしても大丈夫なのか調べる
実際に、そういう蝸牛がいるのかどうかは分りませんが、まるで麻薬のように食べた人を虜にすると思われるそれ、一体どんな味や食感を持っているのでしょうか
幻想的な空気が漂う面白い話でした
 
 
「鵜」
長良川で鵜飼を生業としている主人公
可愛がってきた一人娘に婿養子をとって家業を継がせるつもりだったのだが、あろうことに娘は不倫の末、家を飛び出してしまう
鵜匠だった父親を尊敬し、当然のように鵜匠になった主人公にとって娘の行動は裏切り以外の何物でもなかった
家族への思いやりに欠け、自分の仕事以外何も見てこなかった主人公の自業自得といえばそうですが、主人公には「仕事」しかなかったのです
最後に、長く世話をしてきた鵜にも逃げられるのが哀れです
 
 
 
「魚影の群れ」
大間のマグロ漁師の主人公
妻に家出され、一人娘と暮らしてきたのだが、ある日突然、結婚したいといって男性を連れてくる
主人公は、漁師の修行をして婿養子になってもよい、という男性の全てが気に入らない
「鵜」の主人公と同様、自己中心的で感情のコントロールが出来ない不器用な彼は、娘を取られたとしか考えられないのですが、妻の時のように家出されては困ると思い、渋々男性を船に乗せることにします
ここから後の話は、とても苦しいものでした
船上で男性が大怪我をするのですがマグロを釣るのに夢中の主人公は男性のことは後回し、激しい恨みをかってしまいます
主人公の元を去った若い二人、やがて一人前の漁師となって戻ってきた男性ですが…
主人公が船上で男性に対してとった行動は非難されるべきものでしょう
しかし、マグロの一本釣りで生きてきた主人公にとって、マグロと気に入らない将来の婿のどっちを取るか、となった場合
人道的にどうこう、という意見が通用するのかどうか
この話も哀れを誘います
 
表題作「魚影の群れ」は1983年映画化されているようです
主な出演者は、緒形拳、夏目雅子、佐藤浩一、十朱幸代
あらすじを読むと原作とはかなり違うようですが、是非観賞したいと思いました
 
 
関連記事
スポンサーサイト



Comments 4

There are no comments yet.

こに

No title

やっちいさん
ルポルタージュみたいなのが、余計にリアルな感じを強く押し出してきくるんですよ。
明るい日中に読むのが良いかも。
悪い意味で、すごいところに住まわれていたんですね。
私、新婚でも無理かも^^;

2012/06/28 (Thu) 13:25

やっちい

No title

おもしろそうだけど
気持ち悪そうですね。
新婚早々住んだ官舎はボロボロで
ネズミが大量に出たんですよね~……。
新婚だったから我慢できたケド
今はもう無理!

2012/06/28 (Thu) 09:44

こに

No title

アー君さん
映画をご覧になったのですね。
出演陣からしてインパクトの強そうな映画です。^^
吉村さんは、男性には好まれる作家さんではないかしら。
試しに読んでみて下さいな。

2012/06/28 (Thu) 09:11

アー君

No title

「魚影の群れ」は映画の印象が濃くて、原作は知りませんでした!
こにさん、お勧め作家さんで覚えておきます!

2012/06/27 (Wed) 22:04